出雲|岡本堂の桜餅
こんにちは、たびなかです。
桜餅が出回るこの季節、私の桜餅祭りが始まります。
毎年、さまざまなお店の桜餅を味わうのですが、たくさん食べたいわけではなく、自分好みの桜餅がある店を探すために未知の桜餅をひたすら試し続けています。
きっかけは、約20年前に出会った桜餅。 当時の職場近く、日本橋三越にあった老舗和菓子屋さんの桜餅が気に入って、シーズン中は毎日のように通いました。 ところが、翌年訪れると、その桜餅はリニューアルされ、まったくの別物になってしまっていたのです。
それ以来、理想の桜餅を求めて、目にしたものを片っ端から試すようになりました。 私が好きなのは関東風の桜餅。 餡は少なめ、生地は薄め、葉は薄くて柔らかいものが理想です。それを知る知人たちが、「ここに好きそうな桜餅があったよ」「こんな和菓子屋を見かけたよ」と情報を持ってきてくれます。 それらをもとに食べログで調べてはお気に入りリストに追加し、機会を見つけて訪れたり、買ってきてもらったりして食べ比べをしています。
桜餅は意外と奥が深く、桜の葉、餡、生地というシンプルな組み合わせながら、餡の甘さ、生地の厚さ、桜の葉の塩味や食感、それぞれのバランスによって店ごとに仕上がりが異なるのです。
「そんなにないなら、自分で作ってみたら?」 と、料理教室の先生をしていた知人がレシピをくれて、実際に作ってみたこともあります。 甘さや生地の厚さを自分好みにしてみたものの、理想の味には程遠く…。どんなに素材のひとつひとつにこだわっても、理想の仕上がりになるとは限らないのだと実感しました。やはり和菓子職人さんの作る桜餅には敵いません。当然ですよね。
そんな桜餅を探す中で出会ったのが、東京・十条の和菓子屋さん。 高齢のおじいさんが一人で切り盛りしており、餡・生地・葉のバランスが絶妙な桜餅を提供していました。 「おじさんの桜餅、大好きです!」と伝えると、「そうだろう、美味しいだろう」と自慢げに応えてくれたのが印象的でした。 しかし、数年前に閉店。東京・阿佐ヶ谷にあった和菓子屋さんの桜餅も好みのタイプでしたが、2回訪れただけで閉店。どちらも、もっと早く出会っていたかったお店です。
そんな桜餅祭りの一環として、数年に一度、私の中で一番の桜餅がある岡本堂さんを求めて出雲へ飛びます。
岡本堂さんとの出会いは、十数年前に出雲を旅していた時のこと。 雨の中、出雲大社へ向かう途中、ふと目に入った趣のある和菓子屋さん。 一度は通り過ぎたものの、私の好みの桜餅がありそうな気がしてならず、Uターンして訪れました。
そこにあったのは、関東風の桜餅。それだけでも驚きなのに、使われている餡が一般的なこし餡ではなく、つぶ餡! 私はつぶ餡派なので、まさに夢のような組み合わせでした。甘すぎない餡に、ほどよい塩味の桜の葉がいい感じ。一目惚れし、ダントツで一番好きな桜餅となりました。 それ以来、この桜餅を目当てに出雲を訪れるようになったのです。
岡本堂さんによると、祖父にあたる2代目が今の桜餅を考案し、以来、桜餅の名店として知られるようになったのだとか。この季節には、5個入り10個入りの桜餅の箱が積み上げられ、午後3時頃には売り切れてしまうことも。箱詰めで桜餅を売るお店といえば、長命寺の桜餅くらいしか思い浮かびません。桜餅の人気ぶりがうかがえます。
そんな桜餅をきっかけに出雲のヘビーリピーターとなり、近くの足立美術館にも何度も訪れていますが、いつも桜餅の季節に行くので、ミシュラン三ツ星の庭園の景色は冬にしか見たことがありません。 いつか、ほかの季節の景色も楽しんでみたいものです。
ちなみに私の桜餅祭りはすでにライフワーク。 東京での桜餅探しも続きます。桜餅祭りは、まだまだ終わりません。


